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人件費率40〜50%。美容室の経営でよく目にする目安です。ところが、自分の店舗で出した数字をこの目安と並べても、比べたことにならない場合があります。原因は計算式ではありません。何を人件費に含めるかという、定義の違いです。まず、目安の40〜50%が何を含んだ数字なのかを確認します。
POINTこの記事のポイント
- 人件費率の目安40〜50%は、社会保険の会社負担分(法定福利費)を含んだ定義
- 給与だけで計算すると、その会社負担分だけ低く出て「健全」に見えてしまう
- 人件費は固定費(月給)と変動費(時給)に分けないと、シフトの判断に使えない
- シフトを組んだ時点で概算人件費と人件費率を出す機能は、プレミアムプランの「人件費シミュレーション」
01.目安の40〜50%に含まれているもの
人件費率は「人件費 ÷ 売上」で出します。式そのものは単純ですが、分子に何を入れるかで結果が大きく変わります。目安として語られる40〜50%は、給与だけを指しているわけではなく、社会保険・雇用保険・労災保険の会社負担分(法定福利費)を含んだ定義で使われるのが一般的です。
つまり、給与の支給額だけを分子にして計算すると、会社負担分がまるごと抜け落ちます。その状態で目安と比べると、実態より低い数字を見て「うちは大丈夫」と判断してしまいます。比べる相手と定義が違う指標は、参考になるどころか誤った方向へ押します。
MEMO
02.固定費と変動費を分けないと判断に使えない
もうひとつ、合計の出し方でよくある問題があります。月給のスタッフと時給のスタッフの人件費を 1つの数字にまとめてしまうことです。
月給のスタッフの人件費は、その月のシフトをどう組み替えても変わりません。出勤日を1日増やしても減らしても、支払う額は同じです。一方、時給のスタッフの人件費はシフトに正比例して動きます。この2つを合計だけで見ると、シフトを調整したときに実際いくら動くのかが読めなくなります。「人件費を下げたい」と考えたときに、動かせる部分がどれだけあるのかが分からない状態です。
- 固定費(月給のスタッフ)=シフトを変えても動かない部分
- 変動費(時給のスタッフ・パート・応援)=シフトを変えると動く部分
- 法定福利費=上の2つの合計に対して、率でかかってくる部分
分けて出しておくと、「今月は変動費が先月より◯万円多い」「固定費の比率が高いので、そもそもシフト調整で動かせる幅は小さい」といった判断ができます。合計だけでは、この会話が成立しません。
月給スタッフは「1日あたり」で見ると判断材料になる
固定費は動かないと書きましたが、まったく見なくてよいわけではありません。月給を出勤日数で割った1日あたりの単価を見ると、同じ支払いに対して何日ぶんの勤務があったのかが分かります。固定給のスタッフの出勤が少ない月は、この数字が跳ね上がります。金額そのものは変わらなくても、シフトの組み方を見直す手がかりにはなります。
03.有給休暇を0円で計算しない
見落とされやすいのが、有給休暇を取得した日の扱いです。有給の日を人件費0円として計算すると、有給を消化させた月ほど人件費が安く見えます。実際には賃金は発生しているのですから、これは事実に反しますし、何より判断を逆向きに歪めます。年5日の取得義務があるなかで、数字の上では「取らせない方が安い」ように見えてしまうためです。
有給の日の賃金をどう計算するかは就業規則の定めによりますが、中小規模の実務では「通常どおり勤務した場合に支払われる賃金」を用いることが多くなっています。少なくとも、 0円のまま集計しないことが出発点です。
注意
04.シフトパズルでの出し方
シフトパズルの「人件費シミュレーション」(プレミアムプラン。初期状態はオフで、オーナーが機能設定から有効にします)は、ここまでの整理をそのまま画面にしたものです。シフト管理画面の月次サマリーに、次の内訳が並びます。
- 固定費(月給のスタッフ)と、1人あたりの1日単価
- 変動費(時給のスタッフ・パート・他店舗から来た応援)
- そのうち有給休暇にあたる金額
- 給与ベース計と、そこにかかる法定福利費
- 総人件費と、売上目標に対する人件費率
法定福利費の率は会社ごとに設定でき、初期値は15.5%です。売上目標をその月に入力しておくと、人件費率まで表示されます。売上目標は経営に関わる数字のため、入力できるのはオーナーのみです。
MEMO

05.出した数字をどう使うか
- 1
毎月同じ定義で出し続ける
今月は法定福利費込み、来月は給与だけ、という出し方をすると前月比が意味を失います。定義を1つ決めて固定してください。目安と比べるなら、法定福利費を含む定義にそろえるのが前提です。
- 2
売上目標を先に置く
人件費率は売上との比なので、売上の見込みがないと出せません。目標を月初に置いておくと、シフトを組みながら「この人数でこの目標なら何%になるか」が分かります。実績と目標が離れてきたら目標のほうを更新してください。目標のまま放置すると、率が実態から離れます。
- 3
動かせるのは変動費だけだと理解して調整する
率が高いときに真っ先に見るのは変動費です。ただし削れば良いというものではなく、人を減らせば予約を受けられる枠も減ります。シフト作成そのものを自動化することで、同じ人数でも必要な日に必要な人が入っている状態に近づけるほうが、率の改善としては筋が良い場面が多くあります。
06.数字を見るときに注意したい点
率だけを下げても経営は良くならない
人手を削れば率は下がりますが、施術できる客数も待ち時間も悪化します。率は「売上に対して人件費が過大でないか」を見るための指標であって、下げること自体が目的ではありません。売上が伸びれば、人件費を増やしても率は下がります。
店舗をまたぐ応援がある月は、計上先を確認する
他店舗から応援に来たスタッフのうち、時給制の方の人件費は、その日に働いた店舗(応援先)に計上されます。一方、月給制の方は固定給なので、応援に出ても金額は所属する店舗に計上されたままです。店舗ごとの人件費率を比べるときは、応援の多い月かどうかを頭に入れておいてください。応援の運用は複数店舗の応援シフトの回し方で解説しています。
社会保険の適用が広がると、法定福利費も増える
2026年10月にパートの社会保険の適用条件が変わり、対象になる方が増える見込みです。会社負担分が増えれば、同じ給与でも総人件費は上がります。パートと社会保険の記事もあわせてご確認ください。
07.まとめ
人件費率を目安と比べるなら、法定福利費を含めた定義でそろえることが前提です。給与だけで計算した数字は、その会社負担分だけ低く出ます。そのうえで、固定費と変動費を分けておくと、シフトを調整したときに動く部分がどれだけあるのかが見えます。有給休暇を0円で扱わないことも、判断を歪めないために欠かせません。締めたあとに集計するのではなく、シフトを組んでいる最中にこれらが見える状態を作っておくと、打てる手が増えます。
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